【コラム006】春が訪れた成都への旅(陳星辰)
3月末、私は所属する建築構造学研究室の田川教授と2人の博士後期課程学生、1人の博士前期課程の学生とともに、中国四川省成都市にある西南交通大学土木工学部の橋梁・隧道工程の研究グループを訪れ、JSPS二国間交流事業に基づく研究交流を行いました。
まず、実験施設を案内していただきました。振動台、静的載荷装置、風洞実験室を見学しました。ほとんどの装置が実験中で、振動台の上では技術職員がトンネルの実験を準備し、静的載荷装置では鉄筋コンクリートの橋脚の実験が行われていました。また、風洞実験室では風場の計測が行われ、様々な研究が活発に進行していることが分かりました。実験室は広く、研究エリアのほかに展示エリアもあり、各種支承や減衰装置、橋全体の模型などが展示されて、一般市民や学生向けの普及教育に利用されています。
次に、学術研討会を開催しました。私たちのほかに、西南交通大学、四川大学、中国地震局からの先生や学生も参加しました。会議のテーマは建物と橋梁のレジリエンス性向上で、私たちは、建築構造に適用される様々な減衰装置や地震応答評価方法に関する研究成果を報告しました。中国側からは、新しいコンクリート材料を使用した橋脚に関する研究や振動台を用いた建築非構造部材の実験装置の開発などが報告され、有意義な意見交換が行われました。
学術活動のほかに、私たちは成都の歴史的名所である武侯祠を訪れました。春の訪れとともに、劉備の墓は緑が茂り、そして諸葛亮の祠堂の屋根に書かれた「淡泊明志、宁静致远」は心に響きました。さらに、成都の郊外にある新しいレジャーエリアと一体化した住宅区も見学し、エリア内の商業施設の独特な構造形式や多様な住宅に触れることができました。当然、四川名物料理も堪能しました。火鍋、兔頭、夫婦肺片、紅油抄手など、どれも美味しく、大変満足しました。
この交流活動は、私と西南交通大学の鄧開来先生が共同で申請した両国間交流事業の一環です。この事業は2023年4月から2025年12月末まで続き、建築構造と橋梁のレジリエンス性向上を目指しています。今回は成都での滞在はわずか2日間でしたが、学術面や文化面で多くの刺激を受け、次回の交流を心待ちにしています。