【コラム007】工学部第四類の魅力“まちの玄関と顔を創る”(中薗哲也)
僕が令和3年から携わっていたプロジェクト「広島港クルーズターミナル」が、今年の3月に竣工し3月30日に供用記念式典が盛大に開催された。これまで僕が関係したプロジェクトの中では、建築の規模としては中程度だが、竣工した際の記念式典としては、招待されたVIPのレベルや人数、メディアの数などからして桁違いだった。会場に入るときも、手荷物検査や金属探知機でチェックを受けるなど、こんなにも緊張感のある竣工式典は初めての経験だった。
この建物は公共建築物のなかでもかなり小規模だが、なぜこんなにも注目されたのか?広島港では、宇品外貿ふ頭と五日市ふ頭の二カ所でクルーズ客船を受け入れていて、宇品外貿ふ頭は7万トン級までの中小型船を、五日市ふ頭はそれ以上の大型船を受け入れていた。さらに宇品外貿ふ頭では出入国手続きを船内または仮設テントで対応していた。このような状況から、令和3年度までにふ頭を全長390m、水深10mにまで拡張し、この度ターミナルを建築することで、10万トンを超える大型客船が寄港でき、また旅行者の受入もスムーズにまた快適なサービスも提供できるようになったのである。陸と空に遅れてようやく海の玄関口が完成し、広島のすべての玄関口がそろったいうわけだ。これに対する関係者や市民の大きな喜びと、強い期待がこの度の式典に反映されたのだろう。
宇品外貿ふ頭拡張工事のコンサルタント業務は広島のコンサルタント会社が担当していて、ふ頭もターミナルも広島大学第四類社会基盤環境工学・建築プログラムの卒業生が多く携わっている。土木だけではなく建築だけでもなく、グラデーションでつながった技術で一つのプロジェクトが完成し、さらに世界中からの訪問者の玄関口として利用されることを誇りに思うし、この施設がまちの顔として成長することを期待したい。