【コラム010】街歩きの楽しみ(西名大作)
私が専門とする建築環境・設備分野には,細分野として光環境や音環境,熱環境等がありますが,私自身は環境心理・生理分野を専らとしており,特に2008年に教授に昇任して以降は,景観の心理的評価に関する研究に没頭してきました。
何故,景観の研究をしてきたのか? 理由はいろいろありますが,その一つには景色を眺めることが好きだ,ということがあるでしょう。それも雄大な山々や広大な海原等,全くの自然そのものといった景観より,生活の息吹が感じられたり,伝統的な寺社や民家が散見されたりするような,普通の街並みが好きだというのが大きいですね。何の特徴もなさそうな,どこにでもあるような街であっても,ゆっくりと時間をかけて眺めればいろいろな気づきや発見があります。特にその街がどのように形作られたのか,その街にどんな暮らしや生業があるのかなど,背景となる予備知識をもっていると,より一層,面白さが深まります。
私はこの2026年3月末日をもって広島大学を定年退職しました。これまでにほぼ全ての都道府県,海外も20ヶ国以上は訪れましたが,時間的な余裕もできましたので,まだまだこれからいろんな街を見て回りたいと考えています。学生の皆さんにも是非,街歩きを楽しんでいただいて,その折に都市計画や建築史など,建築プログラムで学んできたことが自分の糧となっていることに気づいてもらえれば幸いです。